「第2回科学技術人材育成シンポジウム」催事報告
第2回科学技術人材育成シンポジウム
2011年1月22日開催

わが国の未来を切り開くために必須である科学技術人材育成、特に青少年の科学技術に対する関心向上、科学技術と技術者に関する国民の理解を深める方策について情報交換を行う、「科学技術人材育成コンソーシアム」の第2回シンポジウムが開催されました。

設立からまもなく1年目を迎える中で開催される今回のシンポジウムでは、日本工学会副会長の桑原洋氏より、より抜本的な教育改革の遂行に向けての厳しい檄が飛ばされました。また各方面からの科学技術人材育成の実践事例のほか、「大学と社会の接点」をテーマとしたパネルディスカッションでは、博士課程教育と産業界の要求がミスマッチしている状況を受けて、「大学院教育の質の保証」をテーマに各界のパネリストが熱い議論を展開しました。

ここでは、その内容の一部をご紹介します。
(記事作成協力:学際ネットワーク設立準備会 大喜康之)

シンポジウム光景
シンポジウム光景
シンポジウム光景
パネリストの方々

開催概要(敬称略)
日時:平成23年1月22日(土)12:30〜16:40

会場:日本学術会議 講堂 (東京都港区六本木7-22-34 地図)

主催:日本工学会(科学技術人材育成コンソーシアム)
        日本学術会議 (土木工学・建築学委員会、機械工学委員会)

共催:科学技術振興機構、日本技術士会、日本工学アカデミー、
        日本技術者教育認定機構、日本機械学会、電気学会、計測自動制御学会、
        地盤工学会、日本非破壊検査協会、日本溶接協会、日本建築学会、
        映像情報メディア学会、日本塑性加工学会、資源・素材学会、
        日本マリンエンジニアリング学会、日本金属学会、日本顕微鏡学会、軽金属学会、
        土木学会、日本工学教育協会、日本鉄鋼協会、日本電機工業会、科学新聞社

後援:文部科学省、経済産業省、国土交通省、日本経済団体連合会、
        朝日新聞社、河川環境管理財団

講演等概要(敬称略)
総合司会:松瀬 貢規(コンソーシアム副代表者)
  1. 開会挨拶
    • 岸 輝雄(日本工学会会長)
    • まず日本工学会の岸輝雄会長より、開会の挨拶があった。その中で、工学の志望者減少はやや下げ止まり傾向にあるものの、今後は質の保証にも目を向けていかなければならないこと、また国策として「イノベーション」が注目される中、その推進のためには工学的なセンス、特に「社会と工学を連結する」センスが非常に強く要求されていることなどが語られた。
  2. 基調講演
  3. 初等中等教育における新しい試み─事例紹介
  4. 質疑
  5. パネルディスカッション「大学と社会の接点−科学技術人材育成−」
    コーディネーター:笠木 伸英(コンソーシアム副代表者)
    科学技術人材育成コンソーシアム副代表の笠木伸英氏により、コンソーシアムの活動目的が再確認され、さらに現在顕在化している以下の諸状況について説明があった。
    • 産業,経済のグローバリゼーション,環境・資源制約の下での国家間のメガコンペティッション,新興国の台頭
    • 我が国の産業空洞化,競争力低下
    • イノベーションと成長戦略,科学技術の役割
    • 少子高齢化(生産労働人口減少),若者の内向き安定思考,理科離れ,工学部離れ
    • 大学教育への批判.教育課程の質保証,資格としての学位認定(Cf. JABEE,技術士制度など)
    • 早期就職・採用活動,新卒一括採用制度

    これらから、パネルディスカッションの焦点を、大学・大学院教育の質保証,そして付与される付加価値とし、 以下の二つの論点について討論を行う旨説明があった。
    • 論点1:理工系教育の目指す人材とは(研究者,技術者,教育者)?
      • 大学教育は,産業界を志望し,産業界が求める人材の育成に応えているか?(大学と職業の接続)
      • 修士・博士課程の目的の差異は明確に意識されているか?博士修了者は研究者か技術者か?
    • 論点2:大学・大学院教育の質保証,認定する学位とは?
      • 教育の質を保証するには?教員の教育面での資質評価?
      • 学位(学士,修士,博士)認定により,どのような能力,スキルが保証されるのか?
      • 資格としての学位と技術士制度

    以降、6人のパネリストにより、産官学の立場、あるいは社会の視点から、ショートプレゼンテーションが行われた。
    パネリスト:
  6. 閉会挨拶
    • 池田 駿介(コンソーシアム代表者)
    • 最後に科学技術人材育成コンソーシアムの池田駿介代表(日本工学会・副会長)より、閉会の挨拶が行われた。その中で、日本学術会議においても、昨年4月に「日本の展望−学術からの提言2010」をまとめるにあたり、11の分野別委員会から共通して出てきた課題が「人材育成」であったことなどが紹介された。このようにさまざまな場で議論され、活動が始まりつつある人材育成について、今後は「連携」と「実践」、「継続性」の3つが重要なキーワードとなること、これらを実現していく中で、学会の位置づけが重要な役割を担っていくであろうことなどが語られた。
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